はじめに

近年、子供たちの体力が年々低下していることをご存じでしょうか?
文部科学省が実施する「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によれば、小・中学生ともに体力の合計得点がここ数年で大きく後退し、とくに新型コロナウイルス感染症の影響下で最低水準を記録しました。
その背景には、「運動不足」や「生活習慣の乱れ」といった要因が複合的に存在していますが、いま最も注目されているのが「スクリーンタイムの増加」です。
スマートフォン、タブレット、ゲーム、動画配信サービス――。これらは日常生活の中で欠かせない存在となっていますが、子供の体力、さらには心身の発育にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
この記事では、文科省データをもとに、スクリーンタイムと運動能力低下の関係を中心に掘り下げ、保護者や教育現場がとるべき対策について考察します。
データが語る、子供の「体力低下」と「回復の兆し」
文科省が公表した令和5年度の調査結果によると、小学生・中学生ともに体力合計点は令和元年を境に下落に転じました。
小学生の体力推移
- 男子小学生は平成30年度に54.2点を記録した後、令和4年度には52.3点まで低下。令和6年度には52.5点とわずかに回復しています。
- 女子小学生も平成30年度に55.9点と最高を記録したが、令和元年度以降に下降し、令和6年度の現在も53.9点と下降傾向です。
中学生の体力推移
- 男子中学生は平成30年度の42.2点から減少し、令和4年度には40.9点。令和6年度には41.7点と改善。
- 女子中学生は50.4点から47.1点に下落後、令和4年度では横ばいの47.3点にとどまっています。
これらの結果からわかるのは、体力の低下は一過性ではなく、長期的な生活習慣の変化による影響が強いということです。コロナの感染流行が始まったころより運動能力が低下し、少しづつではあるが改善傾向にはあったものの、伸びどまっているのが現状と言えそうです。
スクリーンタイムと体力の関係:データが示す現実
では、こうした体力低下に対して「スクリーンタイム」はどのように関係しているのでしょうか。
文部科学省の調査結果を読み解くと、特に中学生女子において、学習以外で1日に4時間以上スクリーンを見ている割合が約25%にのぼるという驚きの結果が報告されています。
スクリーンタイムが長い子供ほど、次のような傾向が見られます:
- 運動時間が短い
- 睡眠時間が不足している
- 朝食をとらない傾向がある
- 集中力・意欲が低下しやすい
つまり、スクリーンタイムの増加は、単に「遊びの時間が増える」ことにとどまらず、生活全体のリズムを崩し、体力低下を招く要因となっているのです。
なぜスクリーンタイムが体力を奪うのか?
1. 身体を動かす時間の減少
スマホやゲームに熱中している時間は、当然ながら運動をする時間ではありません。特にコロナ禍では外出自粛や部活動の制限が続き、スクリーンに向き合う時間が増える一方で、体を動かす時間は大きく削減されました。
2. 姿勢の固定による身体機能の低下
長時間の座位姿勢、特に前かがみでスマホやタブレットを操作することで、筋肉や関節の柔軟性・筋力が衰えやすくなります。また、猫背やストレートネックなど、姿勢の悪化も問題視されています。
3. 睡眠の質の悪化
スクリーンから発せられるブルーライトは、睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌を妨げるとされており、夜更かしの原因や睡眠の質の低下にもなります。十分な睡眠がとれないと、体力の回復や成長ホルモンの分泌に悪影響が出ます。
スクリーンタイム管理のための具体策
子供たちの体力を守るには、「スクリーンとの付き合い方」を見直すことが急務です。以下に家庭で実践できる具体的な管理法をご紹介します。
1. 家族でルールを作る
- 「1日○時間まで」「21時以降は使用しない」などの時間ルールを決めましょう。
- 平日と休日でメリハリをつけると無理なく実行できます。
2. 管理アプリを活用する
- iPhoneの「スクリーンタイム」や、Androidの「ファミリーリンク」など、使用時間を自動的に制限できるアプリを導入。
- 利用状況をグラフで見える化することで、子供自身が自覚しやすくなります。
3. “ながら使用”を避ける
- 食事中や勉強中のスマホ・テレビは禁止し、集中する時間と休む時間を明確に分けましょう。
4. 代替アクティビティを用意する
- 外遊び、スポーツ、読書、ボードゲームなど、家族で一緒に楽しめる“ノースクリーン”の時間を作ると効果的です。
5. 大人も実践する
- 親自身がスマホを手放して、子供と向き合う時間を大切にする姿勢が最も説得力を持ちます。
その他にもSNSにも使用制限をつける機能がありますので、設定してみるのもいいでしょう。
保護者と社会が担うべき役割
スクリーンタイムを減らすことは、子供にとって単なる「制限」ではありません。「体を動かす楽しさ」や「人と直接関わる喜び」を再発見するきっかけにもなります。
そのためには、家庭だけでなく、学校・地域・行政が連携して次のような環境を整備する必要があります:
- 体育や部活動を通じて日常的な運動の機会を提供
- 地域でのスポーツイベント・外遊びの場の整備
- 無料・低価格のスポーツ教室への支援
まとめ:スクリーンの中に体力はない。子供の未来のために今できること
令和時代の子供たちは、かつてないほど多くの情報と便利さに囲まれた環境に暮らしています。しかし、それと引き換えに「自らの体を動かす力」「集中する力」「人と交わる力」が損なわれつつあるのも事実です。
スクリーンタイムの管理は、決して「デジタルを否定する」ことではありません。むしろ、子供たちが健全に成長するために必要な“デジタルとの距離感”を身につけることが、今、最も求められているのです。
大人が変われば、子供も変わります。
今こそ、家族みんなで“スクリーンの向こう側”にある、体を動かす楽しさを取り戻しましょう。